
◆ 夫が死んだら、マンションは誰の物?
今回は、購入したあと誰にでも起きるかもしれない
出来事を、物語風にお届けします。
今住んでいるマンションは誰の物ですか?
「え!誰の物って、そりゃ夫名義だから夫でしょう!」
そうです、夫が生きている間は、
夫名義なので、夫の物です。
しかし、夫が亡くなった場合は、
誰の物になるのでしょうか?
物語は、ここから始まります・・・
※登場人物は、村長家を引用しています。
友人の紹介で「俺たちこれから夫婦仲良く
やっていこうな」と誓い合い結婚。
そして新居のマンションを購入。
新婚生活がスタートし12年経ったが、
あいにく子供は授からなかった。
そんなある日、夫のひろあきが急死した。
原因は心筋梗塞だった。
慌てて葬儀の手配をして、納骨まで終えた。
一人になった時、急に悲しみが込み上げてくる。
「なんで死んだの!」と泣き叫び、
悲しみにふけっていると・・・
◆そこに姑のあい子登場!
待っていたかのように、姑のあい子が
「さよりさん、あれどうするの?」と尋ねてきた。
「え、あれって?」
「ひろあきが残したマンションのことよ」
「お母さん、私がこのまま住み続けます」
「それはダメよ!ダメダメ!
早く売ってお金を分けましょう!」
「えぇ!?どういうことですか!?」
「どうもこうも!親は相続人なのよ!
もらうのは当然でしょう!」
「そんなこと言われても・・・・」
翌日、友人の司法書士に相談したら、
「確かに、ひろあき君のお母さんは
相続人になりますね」
「相続分はどれだけあるのですか?」
「全体の3分の1です」
「ということは、3,000万円で売れたら
お母さんに1,000万円渡すことに?」
「そういうことになりますね」
「そんな~!」と、さよりは嘆いた。
その時、
「そういえば、ひろあき君、生前に遺言の書き方を
教えてほしいと訪ねてきたことがあったよ」
と教えてくれた。
さよりは、ぼんやりとだが思い出した!
「俺に万一のことがあった時は、銀行の貸金庫を
開けてくれ」と言っていたことを・・・。
次の日、足早に銀行へ行き、
貸金庫を開けると中には封筒が入っていた。

◆ 遺言書があった!
その場で封筒を破り、中を覗くと1枚の紙が・・・。
そこには、【遺言書】と書かれてあった。
中身を読み進めると、真ん中あたりに、
【遺言者に属する一切の財産は、
妻むらながさよりに相続させる】 と書いてあったのだ。
さよりはこれで、あの姑にひろあきと一緒に
暮らしたマンションを奪われることは無くなった!と
胸を撫で下ろした。
そして、後日、姑へ遺言書を叩きつけるように渡した。
すると、姑は真っ赤になり、
「まさか!ひろあきがそんなものを残していたとはね!
あなた!よくひろあきを手懐けたわね!」
と露骨に悔しそうな顔をした。
さよりはこれで安心して住み続けられると思った、
と、次の瞬間、姑が大きな声でこう叫んだ!
「でもまだ私には※遺留分減殺請求ができるのよ!」
【追 伸】
※相続法改正があり、遺留分減殺請求は、
2019年7月1日以降、遺留分侵害額請求と
改称され、持ち分を取得するのではなく、
侵害された金額を請求することになりました。

姑あい子は、
もしも、ひろあきが遺言を残していた場合、
わが身の取り分がゼロになるのか、
事前に司法書士に聞いていたのだ。
「ええと、『全財産を妻に~』といった遺言書がたとえ
出てきても、お母さんには【遺留分減殺請求】が
認められますよ」と教えてもらった。
◆【遺留分減殺請求】?
「なんですかそれは?」とあい子は尋ねた。
「え~分かり易く言うと、『残された者(妻や子供など)
以外にすべての遺産を渡す(=遺贈/いぞう)』という
遺言の場合、残された者が路頭に迷うかもしれません よね。
そんな時に遺産の一定割合を、残された者に
保証する制度が【遺留分】なんですよ。
◆ 母親にも取り分がある!
今回のケースのような、
相続人になりえるお母さんの相続分を無視して、
妻さよりへ全部という場合には、
さよりさんへお母さんの最低取り分(遺留分)を
請求することができますよ」
「・・・それで、一体、
私の取り分はいくらになるんですか先生!」
「まず、お母さんの法定相続分は3分の1ですね。
そして【遺留分】はさらにその半分ですから、
6分の1になります」
「だから!先生!いくらなの!」
「お母さん慌てないで、そうですね・・・」
あい子はこののんびりとしている司法書士に
イライラが爆発しかけていた。
「そうですね、3,000万円で売れた場合だと、
取り分は6分の1ですから、500万円になりますよ」
「えぇ!500万円?1,000万円だと思っていたのに!
ずいぶん減るわね!」
あい子は、この知ったばかりの「遺留分減殺請求」を
さよりにぶちまけた。
説明は支離滅裂だったが、
さよりはなんとなく理解した。
要するに500万円相当は母が持っていくのだと・・・
だが、さよりはこのマンションが気に入っている。
このまま売らずに住み続けたいが、
母からの請求をどうすればいいのか?
◆ 解決策は?どうなるの?対策は?
結局、さよりは遺留分の500万円を現金であい子に
支払うことでマンションに住む権利を守れたの
だった・・・。
今回は、何とか現金を用意できましたが
できない場合や母親以外にも法定相続人がいる
場合がありますよね。
そのような場合どうしたらいいのでしょうか?
もし、現金が用意できなかったら、
姑あい子と共有名義(※)となり、
マンションを売って、
現金を分けざるを得なかったでしょう。
※相続法改正があり、遺留分減殺請求は、
2019年7月1日以降、遺留分侵害額請求と
改称され、持ち分を取得するのではなく、
侵害された金額を請求することになりました。
ひろあきが残された妻へマンションを確実に
残したい場合は、遺言書と遺留分相当のお金を
用意しておくことが必要です。
お金については、夫婦でコツコツ貯金をするか、
貯金がし辛い場合は、生命保険なども
有効な手段です。
次に、姑あい子がタイミング良く(怒られそうですが)
すでに他界していた場合はどうなるのでしょうか?
※父親は健在ですが、死亡していると仮定。
※母親の愛子は2023年6月に他界しました。
実は、「やれやれこれでひと安心」とは
いかないのです。

◆ 相続人はまだいるぞ!
え~?まだ誰か登場するの!?
そうです!ひろあきには弟が二人いたのです!
親が死亡している場合、次に兄弟が登場します。
弟二人にも法定相続分として、
それぞれ8分の1が取り分となります。
今回のケースだと3,000万円の内、
妻さよりが2,250万円で、弟二人にそれぞれ
375万円が分配されることになります。
ここでもやはり、伝家の宝刀【遺言書】を残しておく
ことが「妻へマンションを残してあげる」ことに
繋がります。
でも、前回みたいに【遺留分減殺請求】を受けたら
どうするの? ・・・ご安心ください!
兄弟姉妹には「遺留分」は認められていません。
また、上記の事案では子供を授かりませんでしたが、
子供が1人でもいたら、
そもそも親兄弟は相続人にはなれません。
◆ 連れ子はどうなるの?
次に、男性が初婚で、
相手の女性が再婚で連れ子がいる場合、
男性が亡くなると財産は妻に全部引き継がれます。
連れ子には相続されません。
逆に男性は再婚で、子供は元妻と暮らしており、
女性が初婚の場合は、
男性が亡くなると財産は妻が半分、
子供に半分となります。
男性にとって別れた妻との間の子供は相続人に
なりますが、再婚相手の連れ子は血縁関係に
ないので、相続人にはなれないのです。
でも、連れ子でも家族になれば、
可愛い我が子と同じですよね。
では、連れ子にも財産を相続させたい場合、
どうしたらいいのでしょうか?
◆ 連れ子にも財産を相続させるには?
それは、【養子縁組】です。養子縁組をすれば、
連れ子も相続人になることが可能です。
再婚同士で子供が多い方も、どのように遺産を分配
するのか、事前に、弁護士、司法書士、行政書士に
相談しておきましょう。
身近に仕業の方が居られない場合は、
私からご紹介も可能です。
お気軽にお知らせください。
【コラム発行元】
◎ マンションナビ(クローバーライフ株式会社)
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◎ 発行責任者 村長洋明(むらながひろあき)
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