
◆ 神奈川県横浜市で起きた【マンション傾き問題】
あなたは、こんなニュースを覚えていますか?
神奈川県横浜市で起きた【マンション傾き問題】です。
それは2015年10月のことでした。
『マンションが傾いている!』と
当時は大きなニュースになりました。
2007年に完成したマンションで、
4棟建っている内の西向きの棟に
“傾き”が発覚したというのです。
三井不動産側は、横浜市に対して
「震度7想定での検証を行ったが、
倒壊の恐れはない」と報告していますが、
住人の皆さんは不安ですよね。
◆ そもそもなぜ傾いたのか?
では、そもそも何故このような事態に
なったのでしょうか?
まず建築物を建てる際、
土地が軟弱でないかどうかを確認するために、
【地盤調査】を行います。
地盤が固くない土地に何もせず
そのまま建ててしまうと、建物の荷重で、
地面に建物が沈んでしまうことがあります。
それを防ぐために、地盤を改良し固めたり、
固い層まで杭を打ったりします。
今回のケースは、固い支持層まで杭を打つことに
なっていましたが、実際には杭が届いておらず、
建物が沈んで傾いたとされています。
この時点で、建物と建物を繋ぐ手摺りの箇所で
2.4センチ沈んでおり、放っておくとさらに沈む
可能性があります。
◆ 元に戻すことは可能なのか?
では、このような事態になった時、
建物を元の状態に戻すことは可能なのでしょうか?
友人の1級建築士に尋ねてみました。
彼は「耐震改修促進法」に基づき、
昭和56年5月以前に建てられた全国のホテルや
旅館の耐震診断を行っています。
余談ですが、政府は2015年12月末までに該当する
建物は診断結果を報告するよう義務付けていますが
現状で、全国のホテルや旅館のうち、
1割も実施されていないと言っていました。
今回の案件は、彼の経験則によると
「現状の杭に代わる補強を施し、
建物を持ち上げて直す」
ことは可能だということです。
補強だと不安だという場合には
「建物をずらして杭をやりかえる」
ことも可能のようですが、
「住んでおられる建物だと賛同は
得られないだろう」とも話していました。
三井側としては、
「全棟建て替え」も提案しているようですが、
実際には住人の同意が必要になるので
協議には時間が掛かると思われます。
全国の事例を見ても、
老朽化に伴うマンションの建て替えですら、
協議開始から建て替えの建築着手まで、
最低でも5年は掛かっています。
今回は、4棟で705戸あるため、
協議は難航するでしょう。
◆ 売却中やこれから売る予定の人は?
三井は建て替え案以外にも
「購入価格以上で買い取る」方針も示しています。
すでに売却中の方や売却を考えている方にとっても、
重大な問題で、このままでは買い手が見つからない
ため、そのような方への対応策なのでしょう。
では、今すぐでなくても
将来的に売却はできるのでしょうか?
私は、今回の件は「建て替え」をする棟と
「補強と金銭的補償」をする棟に分かれると考えます。
「補強」の棟は、行われた補強で大丈夫だという
横浜市のお墨付きが得られたら、
通常の中古価格で販売可能だと思います。
ただ、同エリア内に同じような規模のマンションが
あると比較されますので、売却に苦戦する可能性は
あるでしょう。
今のところ、ニュースでは「旭化成の手抜き工事が
原因」となっていますが、はたして三井や横浜市には
全く非がなかったのでしょうか?
私は、工事発注をした三井側が、
早く完成させるため工程に無理がある工事を、
旭化成や関係工事業者に課していたことが、
根本的な原因のように思えてなりません。
◆ その後・・・
その後、2016年9月に住民らが全棟建て替えを決議し
2017年5月に解体が始まり、新たなマンションが
建築中です。
私は、建て替え決議に至った早さに驚いています。
いろんな要因が重なったようですが、
それにしても、1年弱での合意は、
住民さん同士のまとまりを感じました。
一方、建て替えと費用と借り住まい費用などを
含めて掛かる約460億円を巡る損害賠償は、
売主と施工会社で裁判となり、
判決はこれからです。
建物の完成は2020年12月の予定です。
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